全てを事実から考える

先行き不透明な世の中で、未来予測の話しが増えている。楽観的な人も悲観的な人もいて、どちらにも考えや価値観があるのだが、その分意見の衝突が目立つようになって来た。

個人的に討論番組が好きでたまに観るが、意見の衝突から視聴者は新しい知見を得たり共感したりもする。但し、時として意見の衝突は大きな対立構造をつくる。2チャンネルの開設者である西村ひろゆき氏などは論破の名人で有名だけど、この人の討論を見ていると、ある一点に気付く。それは西村氏の論点の多くは「事実」から話している事だ。

ある起業家と西村氏の討論の場合、西村氏は「〇〇というデータがある。これを覆せるならどうぞ。」と言い、ある起業家は「僕の考える未来はこう思う。こうすべきだ。」と言う。

それに対し西村氏は「それはあなたの主観や想いであり、事実とは違いますよね。」と突っ込む。おそらくこれを観ていた人の多くは西村氏に対して「人の気持ちや想いが分からない人だ」と考え、この起業家のことを「パッションやビジョンに溢れた人だ。西村氏はドライだ。」と思ったはず。

しかし、討論番組の観点から言うと、明らかに西村氏の勝ちであり、最終的には西村氏のいう事実(もしくは事実から考察する未来)に対して誰も論破が出来なかったし、僕もそう思わされた。勿論、この起業家に対しても、西村氏に対して頑張って抵抗しようとする姿勢に根性や好感は持ったが、仮の話しでどちらが自分の会社の社長だったら良いのかとも考えた。会社や雇用を守り、利益を出して社員の収入も上げ、世の中を引っ張るのか?と言われれば、おそらく西村氏だろう。

全ては事実に基づいているのか?

あなたの考えは事実に基づいているだろうか?会社で意見を言う場があった時に、事実から始めているだろうか?を再度問い直して欲しい。

想いやビジョンを否定しているのでは無く、それらは勿論「再重要」だと思う。その上で、感情を取っ払った「事実」で話せているだろうか?

人は「事実」を並べていくと、時として自分にとっての不都合な事実まで炙り出され、自分が責められている気がして感情的に反論的になったりする事が多々ある。言わずもがな感情的に判断しては駄目だし、感情に寄り添った判断をしてミスジャッジをするのも良くない。あくまでも心は熱く、頭は冷静にだ。

弊社では「Be Integrity(真摯さ、誠実さ)」という姿勢をValues の中心に置いており、どのような事実も、真摯に誠実に受け止めよう、向き合おうとの意味も込めている。

やはりビジネスにおける思考は、事実を集めてから始める事が重要だと思う。

我々の主戦場であるマーケティングの世界でも、リサーチやデータ収集により「事実」を集めてから、仮説を立て推測していくのがセオリーで、事実を集めずに「勘」や「感情」で判断していたらどれだけ失敗しているだろうか。僕自身もそんな判断をした時に限って沢山の失敗をしてきた。

第一原理から考える

僕は、とある高校の理数工学科出身で、物理や化学などの工業化学を中心とした授業の学校に通っていた。通ってはいたけど、毎回留年ギリギリで、学科のワースト4に居続けたのは落ちこぼれだったが。。

その学校の工業化学を16歳から教えるだけあって、僕にとってはレベルが高く、授業で質問する同級生にも、先生にも「何なんだこの人種は?」と強く思った事を覚えている。仮説を立てた化学反応実験、ポケコンによるプログラミングや計算など、なぜ同級生達が16歳程度でそれらに興味を持てたのか未だに分からない。受験を考えたのは14〜15才だろうから尚更だ。

しかし、その環境に身を置き続けると身に付いた事も沢山あり、卒業時にはこの学校に来て良かったと心底思った。

学んだ事は「ロジカルシンキング」「第一原理(事実)から考える」「仮説を立てる」「実験、レポートの習慣」などの在り方や考え方だが、会社運営にもここが活かせるなと思ったりもしている。

特に「第一原理(事実)から考える」という思考法は、物理学を中心にやっていた人特有の思考なのかは分からないが、その当時の先生に何度も言われた事の一つ。社会人になり、マーケティングを行い、経営者になると益々その重要性を痛感する。もっと勉強しておけば良かったかな。

第一原理とはwikipediaによると「他のものから推論することができない命題である。」とあある。第一原理を教えてくれた先生には何度も「類推するな。バイアスを持つな。」と言われた。

※類推とは、一方が他方と似る(幾つかの)点に基づいて、(既知の一方から)他方の有様を全体的に推し測ること。を意味する。偏るな、バイアスを持つな。との意味で指導されたりもした。

調べているとかの有名な起業家であるイーロンマスク氏の記事を見つけ、その時の先生は全く同じ思考だったんだと思った。

イーロン・マスクの成功を支えるシンプルな戦略「第一原理思考」とは

意見の対立から、ダイヤモンドの原石を磨く

事実から考える習慣は公使共に役に立つ。しかし、事実に基づかない推測や想いや、事実を並べても感情的になった思考は対立構造を作る。

弊社のValuesに「Trust&Respect(信頼と敬意)」とあるが、敬意とは相手の意見を信頼し、敬意を持って接する事で、人は尊重される。自分と違う意見があるからこそ、自分の意見は磨かれるのだが、多くの人は自分の意見や主張を覆されるのを嫌がるのだ。それを対立構造で敵視したり、自分の意見に対する見解を自分の人間性への見解(=否定)と捉えて、自分の意見(ダイヤモンド)を磨く可能性がある事に気付かない人も多い。

本来、違う意見を取り入れる事は、自分の盲目さを無くし、仮説の精度を上げて、良いことばかりのはず。だからこそ多様な意見からの議論が大事なのだ。

勿論、無駄な時間は不要だからこそ、全ての議論は「第一原理=事実」から考える事が重要で、事実はある人には白に見えて、ある人には黒に見えたりはしない。事実は事実であり、その”解釈”や”見解”が人によっては白だったり、黒だったりするだけなのだ。だからこそ、まずは認識のギャップが無いように「事実」と真摯に向き合う事から始めようと伝えたい。

冒頭の西村氏などは常に「事実」を冷静に見つめてから話している事はビジネスに置いては特に重要だなと思う。

僕自身も、事実と向き合うFact Baseでこれからも仕事をしていきたい。


株式会社エックスラボ代表取締役 / 起業家団体EO大阪 第11期会長 / 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授。 大阪発のマーケティング会社として、様々なクライアント企業の課題解決に日々取り組んでいます。

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